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10月のひとこと

●依存症は病気です。
意志が弱いから、自分に甘いから依存症が治らないと言う・思う方も多いと思いますが、それは大きな誤解です。
依存症は意志の強さや我慢や忍耐でやめられるようなことではありません。そもそも「やめる/やめない」という考え方をしていてはなかなか治りません。
「したいと思わない/思わせない過ごし方」を模索していくことが大切です。

●依存のしくみ
何らかの物質に依存する「物質依存」、何らかの行為に依存する「行為依存」と呼んでいます。
物質依存にはアルコールや薬物などが、行為依存にはゲームやセックス、ギャンブル、仕事などがあります。

依存しやすい物や行為は、脳の報酬系神経回路で快楽に変わる神経伝達物質(ドーパミン)の量を増やす働きがあり、その摂取や行動を繰り返すことで、脳内でその物や行為と快楽を結びつける学習ができ、再び「したい!」と強く求めるようになってしまいます。その一方で、脳は、最初は強く感じていた快楽に慣れていきます。快楽に慣れてしまいながらも、したい欲求は高まっていく。
こうして、物質依存も行為依存もどんどんやめられない、自分の意志ではコントロールできない状態に陥っていきます。

●依存対象以外の楽しみが色あせていく
依存しやすい物や行為には、てっとり早くスリルや興奮、達成感を得られるという利点があるため、それ以外の物や行為によってストレスを解消したり、気を紛らわしたりすることが面倒くさくなります。また、依存物や行為ほどの快楽は得られないため、何をしても物足りなさや空虚感を感じるようになります。
それにより余計にストレスや欲求不満が溜まり、ますます依存物や行為に依存してしまいます。
一度依存物や行為による強い快楽を覚えてしまった脳を元の状態に戻すことは困難であり、再発するケースも非常に多いとされています。ですが、

●依存対象(食事)を楽しみの1つに戻すことは可能
摂食障害克服者としては、「完全に元に戻ることはないとしても(それ自体そんなに重要なことじゃない)食べることを1つの楽しみとして、他の楽しみと同じようにして捉えられ、心穏やかに過ごせるようになる」と自信を持って言えます。
また、そうなっていくためには他者との触れ合いの中で自己肯定感を高めていくことが重要であることも確信しています。

●素の自分を見せても嫌わない人の存在
他者との触れ合いの中で、「こんな自分でもいいんだ」という安心感が得られると、自己肯定感が育まれていきます。
ダメだと思っていた自分を受け入れられるようになる、受け入れてもらえていることを信じられる体験・体感は克服するために、とても大切なことだと思います。
逆に言えば、自分ひとりだけでは、或いはありのままの自分を見せずに他者と関わり続けていては、自己開示や自己受容の機会がなく、自己肯定感も高めていけず、依存症を克服することも難しいと思います。ダメな自分(自己否定感の強い自分)を癒す術が依存物・対象しかないからです。

●まずは、この人なら話しても大丈夫かなと思う人に小出しして話してみる(強い期待は持たずに)
ありのままの自分を見せる=病気について全部さらけ出すということではありません。
かといって、誰にも病気のことを言わないで治す!となると、それはそれで病気に対する正しい知識や回復方法が分からないし、ネットなどの偏った情報しか目にしないのも問題だと思います。

勇気がいると思いますが、やはりまずはご家族や病院、カウンセリングなどに相談してみてほしいと思います。
人も場所も相性はあると思いますが、自分にもサポーターにも「絶対」や「完璧」を強く求めず、少しでも不安が減ったり、ホッとできる人や場所や情報があれば、できれば継続してそのサポートを受けてみてほしいと思います。継続していく中で信頼したり気づけたりすることが多々あるからです。

●再発を防ぐためには
依存症は適切なサポートを受けていれば必ず回復していきますが、その過程で再発してしまうことはよくあることです。
再発を繰り返しながら、再発しないコツを覚えていくことは珍しいことではありません。
とはいえ、再発は仕方のないことだとされるのも嫌ですよね。誰もが再発防止策があるならば知りたいと思うはず。

●再発の4つの引き金
再発の引き金になる危険性の高い状態として「空腹」「怒り」「孤独(寂しさ)」「疲れ」があります。
実は、依存症の人たちはこれらの4つの感情に気づいたり対処することが苦手だとされています。
摂食障害に関して言えば、「淋しい女は太る」という言葉がありますが、自分の経験からしてそうかもしれないなと思います。

日ごろから、気を張り続けたり我慢し続けることが当たり前になっている=気を緩めることや息抜きが苦手だったり、無駄な時間が許せない人は、不安や孤独、ストレスを抱え込みやすく、その結果何らかに依存しやすく、再発もしやすいので注意が必要です。

空腹な時間を作らないこと、怒りや孤独感、疲れに気づき、それらの対処法を学ぶこと。そのためにはこれら対応策を一緒に考え、回復を支えるサポーターの存在が必要です。場合によっては、回復を補助する薬を用いる場合もあります。

●自己否定感しかなかった
私は元々食べることが大好きで、特に炭水化物(糖質)が大好きでした。天真爛漫で社交的でオープンマインドなのが「私らしさ」だったと思います。

でも、ありのままの自分でいると友達が離れていく。徐々に疎外感を感じるようになってゆき、どうしたらいいか分からず悩み始めたときに何気なく始めたのがダイエットでした。

ほんの少しお菓子を我慢しただけで簡単に痩せられたことがとても嬉しくて♪ と同時に、痩せてさえいれば、余計なことを悩まずに済む!と思い込んでいきました。
その一方で、太ったら嫌われる、辛い目に遭うという不安や恐怖が増してゆき、自分の評価を全て体重の数値にゆだねるようになりました。自分の評価を他人にゆだねるよりよほど楽でした。

食事のコントロールができればよし、できなければダメ。痩せればよし、太ればダメ。痩せるために本来全然好きじゃない運動をし続けたり、大好きなお菓子を「明日から絶対に食べない!」としてみたり。

今思えば、ものすごく自分を虐めていたなーと思います。でも、当時の私に自分を虐めている自覚は全然なくて(もちろん褒めることもなく)拒食の反動から来る過食に戸惑い、そんな自分を責めては現実逃避の過食をするようになっていきました。

当時の私は自己肯定感が全くなくて、自分のことが本当に嫌いでした。そんな自分に好意を持ってくれる人たちの真意が全く分からず、人をなかなか信用することができませんでした。
ならば、自分で自己肯定感を高めていくしかないのですが、これがものすごく難しくてなかなかできなくて、苦しかった😢

克服できた!と思った頃に何度となく摂食障害をぶり返してきました。でもそのお陰で、自己否定感から生じる「自責と自虐と自分に対する嘘(ごまかし)は依存症を悪化させる、再発させる」ということが嫌という程分かりました。

●自己肯定感は本当に大事です。
でも、その前に自己否定感を減らしていかないとです
カウンセリングで「それは自分いじめだよー」と私が指摘すると、「これも自責なんですね!全然気づかなかった!」と仰る方がたくさんいます。皆さん、自分に本当に厳しいなと思います。

自己否定感による言動に気づけないと、当然それらの言動を変えていくことができず、自己肯定感も高めていけません。
話す(心を開く・放つ)ことは気づくこと。気づくことは変わること。気づいて納得ができれば、あとは早いです☺☆

どうか、ひとりで悩まず、できれば継続的に(定期的に)利害関係のないサポーターに相談してみてほしいな、助けを求めてほしいなと思います。

今月も皆さんといろんなお話ができることを愉しみにしています❤
どうぞよろしくお願いします。

令和2年10月5日
摂食障害カウンセリング あや相談室主宰
摂食障害カウンセラー 長谷川あや

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