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8月のひとこと

最初に、
誰でも読むことができる場所に、自分の親が人格障害者かもしれない…と書くことには強い迷いと抵抗がありました。でも、母と距離を置き、摂食障害を克復し、母と健全な関係を保てている今こそ、毒親だったと思う昔の母と境界性人格障害について書いてみたいと思いました。

●母性の乏しい人
母をひとことで表現するならば「母性の乏しい人」でした。母に甘えられたり優しくしてもらった記憶が私にはありません。彼女の足音が近づいてくると、神経がピーン!と張り詰めました。「なんでそんなに機嫌が悪いの?私、何か悪いことをした?」考えても考えても、その答えが見つかることはありませんでした。

●境界性人格障害の母親
私の母は境界性人格障害者だったんじゃないかなと思います。
母が受診して医師からそう言われたわけではありません。母本人は自分の言動について何1つ悩んでいませんでした。悩んでいたのは私だけです。でも、後になって『悩んでいないことが人格障害の特徴』だと知りました。

●境界性人格障害とは
対人関係の不安定さや見捨てられ不安、著しい衝動性、強烈な怒り、虚無感、感情のむら、自傷行為などがあげられ、個々で異なる症状を合わせ持っています。(アメリカのボーダーラインの診断基準より引用)

境界性人格障害者(以下、ボーダーライン)は、常に自分や他者に対して否定的な感情を持って生きています。その否定的思考のせいで、我が子を安心させたり信頼させたり慰めることができません。純粋に喜ぶ、楽しむ我が子に強烈な嫉妬心を抱くこともあります。
ちょっとしたことで動揺し、いきなり怒り出したり、我が子を叩いたり、モノを投げたり。我が子の気持ちを削ぐような発言を平気で言えるし、公の場で我が子に恥をかかせ、子どものプライドを傷つける行為もお手の物です。

●当てにならない父親
ボーダーラインの女性の魅力に惹かれて結婚した男性は、子どもにとって「当てにならない父親」となります。私の父もそうでした。私より母の味方である父を、私は頼ることも信じることもできませんでした。

●それはあなたが悪いから
ボーダーラインは外見や外面が良い場合が多く、他人に親の異常さを話したところで、「それはあなたが悪いからでしょう」となかなか信じてもらえません。

ボーダーラインの人は、すぐに「自分が犠牲になっている」とか「不当の扱いを受けている」と考えてしまいます。かわいそうな人なんだとは思います。だけど、こんな親の言動に振り回され続ける子どもはたまったものじゃありません。どんな事情があろうが、子どもには全く非はありません。彼らは完全な被害者です。

●人を信用することができない
ボーダーラインがいる家庭&周囲の無理解の中で成長していった人は、自尊心も自己肯定感も安心感もないし、人を信用することもできません。あるのは不安と絶望と罪悪だけです。生き延びるための手段として、自分の感情を麻痺させてしまう人もいます。自分は誰にも必要とされない無用な存在だと思い込むのです。幸せになりたいなんてもってのほかだと。
事実、幸せに慣れていないため、そういうひとときが訪れると耐えられなくなり、自分から幸せを遠のかせてしまいます。

●ネグレクト
子どもの頃の私が一番堪えたのは、いつまで続くか分からない母からの完全なる「無視」でした。私の声は彼女に明らかに聞こえているはずなのに、まるで私がそこにいないかのように自然に振る舞う母を見る度に、心がズタズタになりました。でも、母自身は、自分がどれほど強力な破壊行為を娘にしているかに全く気づいていないのです。そもそも相手の気持ちなんてどうでもいいのです。これがボーダーラインの最たる特徴です。
気づいていない、悩んでもいない。だから通院もしないし、治療も受けない。もちろん治そうとも思わないし、そもそも治らないのです。でも、そうこうしているうちに、子どもの方が悩み始めて病んでしまいます。

●親から得られるはずの安心感がない
子どもの健全な自尊心と精神的な健康の鍵(ベース)となるのは、「親は自分のことを信じてくれている」と信じられることです。ところが、ボーダーラインの親は、彼ら自身が自分の親からこの贈り物を一度も受け取ったことがないため、自分も我が子にそれをプレゼントすることができません。これは、ボーダーラインによる虚無感、無力感、激情、恐れは次の世代に受け継がれていく可能性が高いことを意味しています。

●対処法
ボーダーラインの親に育てられた人が幸せになるためには、『ボーダーラインの親からのコントロールをいかに逃れるか』にかかっています。
多分、ボーダーラインの親を変えることはとても難しいです。でも、自分の言動を変えていくことで自分の未来を変えていくことはできます。私もそうすることができた1人なのでそう思います。

自分が変わるために何よりも大切なことは、『ボーダーラインの言いなりにならない』ことです。
ところが、ボーダーラインに育てられた人にとって、これが非常に苦痛で困難なことなのです。なぜなら、彼らは常に親の機嫌をいつも伺い、自分の意見や感情を親に伝えられることなく生きてきたからです。そんな彼らにとって、親に自分の意見や意志を伝えることは、彼らに刃向かうこと以外のなにものでもなく、「そんなことをしたらどうなってしまうんだろう?」という尋常じゃない怖れを感じてしまいます。
この恐れがある限り、自分ひとりではなかなか「親の言いなりにならない」はできないと思います。そこで、サポーターの存在が必要になります。サポーターとは、継続したサポートをしてくれる、感情の安定している他者(友人・知人・親戚)や医師やカウンセラーなどのことです。私にとっての一番のサポーターは主人でした。

●助けを求められない
カウンセリングが盛んで敷居の低いアメリカでは、心の悩みをカウンセラーに相談することは極々ふつうのことですが、日本ではまだまだ自分1人で悩みを抱え込んで苦しんでいる人がたくさんいると思います。
特に、親がボーダーラインであるが故の悩みは、その子どもでもある自分にとって恥ずかしいことですし、先に書いたように、生き延びる手段として、自分の感情を麻痺させてしまう人も多く、なかなか他人に助けを求め(られ)ません。

●生きづらさの背景
私のカウンセリングにいらっしゃる方の中にも、親御さんとの関係に悩まれている方は少なからずいらっしゃいます。一方で、いびつな親子関係に全く気づかずに、「自分がなんでこんなに生きづらいのかが分からない」と悩まれて相談に来られる方もいます。
いずれにしても、長年の虚無感、無力感、激情、恐れなどの本当の原因が、親子関係にあったのだと分かると、ほとんどの方が、親との適度な距離の取り方を模索し始めます。そして、自分で意志決定していく勇気を持つようになります。もちろん、クライアントの方が本当に安心できるまで、また安心できた後もしっかりサポートさせて頂きます♡

●お勧めの本
最後に、この文章を書くために参考にした本をご紹介します。
「母にココロを引き裂かれて 娘を苦しめる(境界性人格障害)の母親/クリスティーヌ・A ローソン 」です。
私はこの本のP41に書いてある「理想の母親vsボーダーラインの母親」の表を見たとき、自分の母が後者であることを改めて確信しました。この本のAmazonの読者のレビューを読んでみるだけでも、「悩み苦しんできたのは自分ひとりだけじゃないんだ」「私が悪かったわけじゃないんだだ」と感じられて少し心が楽になったり勇気をもらえるかもしれません。

令和元年8月1日
摂食障害カウンセリング あや相談室主宰
摂食障害カウンセラー 長谷川あや

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