7月のひとこと
●1度の失敗経験からはじまる脅威・強迫、ネガティブな思い込み
たったの1度の失敗(不安、恐怖、失望)体験で「自分は無能でダメな人間だ!」と思い込んでしまうことがあります。
私たちは、不安や恐れを感じた時、予めそれ用に設定されている感情や考え方をします。皆さんは、「失敗体験をしたとき、自分の脳がどんな反応を起こすかを知っていますか?
もしあなたの脳が失敗体験をした時に、防衛本能の1つの術として「自分はダメな人間なんだ!」とあなたに信じ込まようとしたならば、あなたはネガティブな勘違いを抱いてあらゆる挑戦をやめてしまいます。更に悪いのは、その体験とは全く関係ないことに対しても「私はダメ人間だから無理。できっこない!」と信じ込んでしまうことです。
たった1つの失敗体験で、自分は無能だと信じ込ませる脳の反応。ちょっと怖いですよね。しかも、一度植え付けられた思い込みとそれに関わる言動はなかなか変えられません。
何かに失敗して落ちこんだり、やる気を無くしたり、挫折感を味うことはおかしなことではありませんが、そのことにより「自分は何も成功できない人間なのだ」という思い込みの暴走は避けたいですね。
たった1度の失敗体験でも、そのダメージを強く受けてしまうのは自尊心(プライド)の低さが関係しています。私達の自尊心は、自分の1番の味方にも敵にもなります。
Aさんは、信頼していた彼が浮気していることが分かりとても傷つきました。そして彼と別れ、傷ついた気持ちをなんとか切り替え、新しい彼ができました。ところがある日のデートで、彼の機嫌があまり良くありません。彼は「体調が悪いから」と言ってデートの途中で家に帰ってしまいました。彼女はとても傷つきました。そこで親友に電話しこのことを話しました。するとその親友は「あなたに良いところなんてひとつもないもんね。彼はあなたのことが好きじゃないのよ。一緒にいたら恥ずかしいって思ったのかもよ。あなた、一体何を期待していたの?いつものことじゃない!これからはずっとひとりでいなさいよ!」と言いました。これって酷くありませんか??親友の言う言葉だとはとても思えません。
実はこの言葉は、彼女が自分自身に言った言葉なのです。皆さんも同じようなことを経験したことがありませんか?
「あんたなんて死ねばいいのに」「あんたなんて誰も必要としていないよ」「最低!」などと傷ついて落ち込む自分に対して、酷い言葉を言い放ったことがありませんか?心に傷を負っているのに、その傷口に更にナイフを突き刺す、いわゆる精神的自傷行為は先にも話した自尊心(プライド)の低さから生じます。
失敗を経験した時に真っ先にしなければならないケアは、「自尊心を回復させる」ことです。
自尊心を回復させる行為とは、大切な人が落ちこんでいる時にあなたがしてあげたくなることを自分にもしてあげることです。自分に「同情してあげる」のです。その意識(勇気・訓練)の継続により、自尊心は確実に回復していき、ストレスへの免疫力も強まっていきます。
クライアントのHさんはとても自分に厳しくて自尊心の低い方でした。思うようにいかないことがあるとすぐに「死んじゃえばいいのに!」と自分を責め、そのたびに過食し、過食する自分を更に責めていました。ある日、友人に誘われて気分転換にと見学に行った劇団に勢いで入団。いろんな人の役を演じるようになってから彼女の気持ちに少しずつ変化が出てきました。演技の勉強を通して、他人と自分の取り扱いにあれこれ差を付けることが面倒臭くなった!とのこと(笑)今では、他人にするように自分の気持ちに同情し味方し(自尊心の回復)、当然自分を責めることも減り、過食はしたいとも思わなくなったというHさんです。
2015年7月1日
摂食障害専門カウンセリング あや相談室主宰
摂食障害カウンセラー 長谷川あや