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いちぬけた〜!
2008/03/13
去年の末、息子たちは小学校を転校をしました。理由は長男に対するいじめです。最初は徹底的に戦おうと思っていましたが、誰と戦えばいいのかが分からなくなってゆき、途中から「逃げるが勝ちだ!」と気持ちを切り替えました。今はふたりとも新しい学校で友達も趣味もでき、とても楽しく過ごしています。今は、「逃げてもいいんだ」「逃げることは悪いことではないんだ」ということを、子供たちに教えることができて本当に良かったと思っています。というのも、人は小さい頃から「逃げることは悪いことだ」と教えられていくからです。 摂食障害は親子関係に問題があるとは良く言われる話ですが、それだけじゃありません!もちろんそれも1つの理由として否定できませんし、それだけが原因で摂食障害になるお子さんも確かにいます。でもカウンセリングという仕事を始め、一番驚いたのは、いじめに遭ったことがある人や、そのせいで自尊心や自己評価を低めてしまっている人がいかに多いかということでした。いじめだけじゃなく、嫌な経験をすることは誰にでもあることです。その時その子の味方になってあげる友達や大人が一人でもいれば、その子はそれを信じて頑張れます。自尊心や自己評価を低めずに生きていけます。でも誰も助けてくれなかった、逃げることは許されなかった、逃げても良いと言ってくれる人が誰もいなかった、という子は、その辛い経験の理由を「自分が悪かったからなんだ」と受け止めるしかありません。これほど辛くて空しい感情はありません。 長男はいじめに遭ったことはもちろんですが、いじめを黙認している教師と友達の姿に激しく傷ついたそうです。そんな息子は、転入した学校で、彼の隣の席に座っている女の子が自分以上にひどく、陰湿ないじめを受けていることにすぐに気がつきました。「いじめはどこにでもあるんだ・・・」と絶望し、と同時に「また自分もいじめられるかもしれない!」と恐怖を感じたと言います。私も同感でした。でも息子はさりげなく、周りの子に気づかれないよう細心の注意を払って、その女の子をできるかぎり助けてあげました。誰かにそれを指摘されたときは「おれ、新入生だし、このクラスで何が起こっているのかよく分からないし・・・」というおどけた顔をしておいたそうです。私はその話を聞いてもうハラハラドキドキ。これをきっかけに息子もいじめられたらどうしよう!と心配になりました。でもすぐにその気持ちを振り切りました。「そうなった時にまた考えればいいや!大丈夫!」 そして息子に「あんた、格好良すぎ〜!ママはあなたみたいなことはできなかったと思う。あなたがいるから、その子は学校に来れるんだと思う。あなたがいるから、その子は頑張れるんだと思う。あなたは本当にすごいことを、なかなかできないことをしているんだよ。ママ、本当に尊敬してるよ」と伝えました。冬休みが終わり、3学期に入り、私は息子から聞いていたいじめの話を全てその子のお母さんと、行動力のあるママ友達にも話しました。後者の彼女は「なんですって!?私が校長先生に全て話してくる!」と言ってくださり、問題はやっとやっと公の場に。何も知らされていなかった校長は驚愕しまくり憤慨しまくり。「この話をなるべく沢山の方に話してください!私もすぐに動きますから!」 翌日、息子のクラスの1,2時間目の授業はなし。生徒全員の前で、ベテランの先生と校長が「○(いじめられている女の子の名前)ちゃんをいじめたことのある子は全員立ちなさい!」と怒鳴りました。・・・シーン、誰も立ちません。「先生は全部知っているんだ!そこのお前、お前がやったことも全部知っているんだぞ!立て!!」すると息子以外の子が全員席を立ったそうです。これには息子も先生方もびっくり。次に生徒一人ずつ別の部屋に呼ばれ、クラスで何があったのか詳しく聞かれました。そして一人一人、その女の子に謝っていきました。 翌日から、いじめはパタリとなくなりました。息子は本当に喜んでいましたが、「こんなことで本当にいじめはなくなるの?」と私はちょっと心配でした。 でも子供はバカではありません。自分が頭を使ってやってきた楽しみが、実はこと細かに大人たちにばれていた!これほどの恐怖はありません。今後もしちょっとでもその子が不快になることをしたら、自分はここにはいられなくなる!!そう思ったのでしょう。 学校や大人は「いじめは悪いことなのだ」と教えます。でも悪いことは時として楽しいことになり、それは集団でやっていることであればあるほど正当化されていきます。ですから「悪い!」という言い方ではなく、「これをしたら、自分の身が危険にさらされるんだ!」と体感・納得させる方が子供たちはいじめをしないのかもしれません。現にその女の子はその後一切いじめられなくなり、友達もでき、笑顔が増え明るく過ごせています。 私と息子は逃げることを選択しました。そのことに後悔はしていませんが「誰も助けてくれなかった」という悲しみは残りました。でもこの気持ちも、この一件ですべてチャラになりました。私と息子がしてほしかったこと、したかったことが、新しい学校と新しい友達の間で実現できたのは偶然ではなく、まさに必然でした。 最後に、あなたのちょっとした勇気が、誰かの一生の支えになります。もしあなたの周りで辛い思いをしている人がいたら、ちょっとした言葉でも態度でもいいから「あなたの味方だよ!」と伝えてあげてください。個の力は何よりも強いのです。そして集団からしたら、この力が一番の恐ろしい。だから集団でいようとする。そろそろパワーゲームから抜け出して、一人で爽快に歩き出しませんか?意外や意外。楽ですよ〜♪
*2007年8月 あや相談室・ひとことより
2008/03/13
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