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父の還暦祝い
2007/01/28

 去年の末、母から「パパ、来年還暦なのよ。こういうのって長女が祝うらしいの。なんかお祝いをしてあげてくれないかしら」と言われた。面倒臭いなーと思った。正直なところ、両親に対して大した感謝もしていないし、今の自分がここにいるのは、自分自身の努力があったからだと思っているし・・・。そもそも還暦祝いって何?という感じ。数年前、義父の還暦祝いに招かれた時、生まれて初めてそういうお祝い事があることを知った私。赤いちゃんちゃんこを着て照れくさそうに笑っている義父を見て、「ひえ〜」とびっくりしたっけ。←ここだけの話ですが^^;
 母の「椿山荘なんかでどう?」というリクエストに、またまた「ひぇ〜。カンレキイワイってそんなところでやらなくちゃいけないの?」とびっくり。でもやるからにはそこそこのところでやらないとだめだよな〜と思い、池袋のとあるホテルにある中華料理店の個室を予約。弟家族も誘って計9名で行うことにした。そのことを母に伝えたらとても嬉しそう。それだったらもう少し何かしようかなと思い、記念撮影のためにデパート内の写真館にも予約。赤いちゃんちゃんこはネットで購入。子供たちには「じぃじの60歳のお誕生日祝いだから、お手紙を書いてあげて」と頼んだ。母から、父はシェービングセットが欲しいらしいと聞いていたので、デパートに見に行った。でも5千円〜50万円まであるそれは、やはり高いもの程素晴らしい。私まで欲しくなる(笑)。これは弟と折半だな〜と、彼に電話してみると「いくらでもいい」とのこと。またまた「ひぇ〜」。いくらでもいいってあァた・・・か、かっこいいわねぇ^^; いろいろ悩んだ結果、ブラシ&ホルダーの柄がバラの木でできている淡朱色のものを購入。ホテルには、誕生日ケーキも用意してもらった。

 そして祝賀会当日、まずはみんなで記念撮影。父は「こんなの着ないよ〜」と言いつつも全く嫌がらずに素直に赤いちゃんちゃんこを羽織り、同じく赤い大きな帽子をかぶった。もしかしたら着てくれないのではないかと思っていたのでちょっと意外だった。
実はこの写真館。私たち家族の記念日には欠かさず利用してきたお店。高校の入学祝いに撮った写真の中の私は反抗期のまっただ中。ブス〜としながらこちらを睨んでいる(苦笑)。短大入学祝いの時の私は拒食症だったためとても痩せている。痛々しくて見られない(涙)。実家で大切に保管されている数枚の記念写真が、その時々の私や家族をそのまま写している。
・・・きっと今回の写真が、私たち家族にとって一番良い思い出になるのではないかと思いながら、カメラに向かって笑った。
 ホテルでは特選お祝いコースを堪能。途中、孫から手品とお手紙をもらい「おぉ〜っ」、シェービングセットは箱から出して「ほほぉ〜」と目を細める父。デザートタイムになると部屋がいきなり真っ暗に☆そこにローソク6本の立ったケーキが運ばれてきて、みんなでハッピーバースディを歌った♪拍手の中、父はなかなかローソクの火を消さない。・・・そういえば父の誕生日に、いやそれ以外でも、こんなことをしたことなかったかもしれない。
 食事を終え、最後に父にひとことお願いすると、いつも無口かつまらないことしか言わない父がゆっくりとした口調で「ぼくは大したことは何1つしてこなかったと思うけど、今日こうして子供たちと、そして(孫の)○くん、○くん、○ちゃんと一緒に楽しい時間を過ごせて、改めて『あぁ、これがぼくの家族なんだな』と思いました。こんなステキな家族に恵まれとても幸せです。今日は本当にありがとうございました」と言った。私は涙をこらえるのに必死だった。

 父の言葉を聞いたその瞬間、何かから解放された。それは、摂食障害の苦しみから解放されてもなお、根強く残っていた両親へのわだかまりだと思う。それは私の体から細い風のようにス〜っと抜けていった。ようやくようやく全てのことから解放された気がした。
なんでだろう?分からない。でもとにかく解放された気がする。その理由を一言でいうならば、やはり「時の流れ」だろう。私も妻となり、二児の母となり、いろんな経験をしてきたからだろう。
 母ばかりにあらゆる想いが向いていた。父なんてほんとどーでもいい存在だった。腹が立つことか傷つくことしかされていないと思っていた。でも今の私がここにいるのは、父が一生懸命働いて私を育ててくれたからなんだ。もちろん自分で努力したことも沢山あるけれど、それは誰だってそうだ。当たり前のことじゃないか。

・・・どうせなら椿山荘でもっと豪華にやればよかったかな?とも思ったけどもう遅い(笑)。父が70歳になっても80歳になってもこうやってみんなで集まって和やかに過ごせれば、それでいいよね^^
それにしても、私も親を喜ばせることを喜ぶ歳になったんだなーと思ったら、急に老け込んだ気がした(笑)。
2007/01/28
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