|
|
|
私はもう普通なの?
2004/09/04
彼と付き合い始めて3、4回目のデートの時のことだったと思います。すごくハッピーですごく調子が良く、当然過食する気も全くなくて「もう治ったのかも〜♪」と今まで何百回と裏切られてきた淡い期待を懲りもせずに持ちながら喜んでいました。 でもそれは突然来ました。いつも突然なんですけどね(^-^;)。 どうして?こんなに幸せなのにどうして?? そう思えば思う程焦りと不安にどんどん押し潰されていきます。 明日は彼とデートする日なのに・・・そう思うともっと食べてしまいます。 翌朝は、こんなに顔が浮腫んでいる!今日は彼に会えない!でももう彼は家を出ているはず! どうしよう!・・・あれこれ考えれば考えるほどまた食べてしまいます。もう外に出る勇気なんてこれっぽっちもありません。
今と違って携帯電話なんてない時代です。私が来るのをずっと待っている彼のことを考えると居ても立ってもいられません。でもやっぱり会えない。そんな自分が本当に嫌で家でずっと泣いていました。そこに彼から電話が入りました。 「なんで家にいるの?」 「ごめん、もう会えない。ごめん」私は泣きながら言いました。 「はぁ?なんでだよ!?」彼は怒っています。当然です。理由が全然分からないのですから。 「ごめんね」一方的に電話を切り、自分はなんて不幸なんだろうとまた泣きました。 好きな人ができても、幸せを感じても、過食には絶対に勝てない。過食に勝ることなんて何もないんだ!!
しばらく経って、インターフォンが鳴りました。彼です。びっくりしました。でも絶対に会えません。 こんなに顔が浮腫んでいるのに、こんなにボロボロなのに会えるはずがありません。ドアの前で彼が言いました。「さっきの言葉はなんだよ?俺のこと、嫌いになったなら正直にそう言えばいいだろう!?」 「違うよ!」思わずドアを開けていました。 ええい!もうどうにでもなれだ!! 「私ね、たまにね、すごく食べちゃうの。どうしてなのかよく分からないけどとにかくすごく食べちゃうの。そうするとすごく鬱になっちゃってもっと食べちゃうの。痩せていたいのにどんどん太っていっちゃうの。あなたに会いたくてもどうしても会えなくなっちゃうの!」 もうおしまいだ。もうこれで彼とも終わりだ。 恐る恐る彼の顔を見上げると、彼はハァ〜?という顔をして「な、なんだよ。そんなことかよ。俺さ、新手の振り方なのかな〜って思って、びっくりして来ちゃったじゃんかよ。脅かすなよ」と言いながらちょっとむかついているご様子。 「あ、あなたにはどうでもいいことでも、私は長年これですごく苦しんできたの!!あなただって私がぶくぶく太っていったら嫌いになるでしょう?一緒に歩きたくなくなるでしょう?」 「へ?別に。食べたきゃ食べればいいじゃん。お前が100キロになっても200キロになっても俺はどーでもいいよ」
以前の私なら「どうでもいいってどういうことよ!?」「あなたが良くても私は嫌なのよ!」と思ったと思います。彼がもっと気の利く言葉をかけてくれたとしても、その言葉を素直に受け取ることはできなかったでしょう。何故ならば以前の私は、自分を完全に否定していたからです。自分が世界で一番嫌いだったからです。だから誰から誉められても、嬉しい言葉を言われても、その言葉を信じることは絶対にできませんでした。 でもこの頃の私は、駄目な自分でもできることが少しずつ増え(=勇気を出して少しずつ増やしていき)「こんな私でもいいのかも・・・」と思えるようになってきていました。 だから彼の飾り気のない言葉に「もう少し気の利いた言葉を使えないのかい?」と呆れつつも、私のことを普通に扱ってくれている彼の態度がすごく新鮮ですごく嬉しかったのです。
ボロボロの自分を彼に見せてしまったことで、良くも悪くも開き直ってしまえた私は、それ以降どんな状態でも彼と会えるようになりました。今までいろんな人に合わせて生きてきたけど、彼の前では素の自分でいられる気がしました。自分の存在価値を求めてはまっていたチャットやオフ会は次第に行かなくなりました。 それでも相変わらず過食はしたり、辛いことも沢山ありました。 でも辛いときは彼の前で泣きました。過去の辛かった出来事も涙の力を借りながら、その時言いたいと思ったことだけを彼に話しました。 一生懸命聞いているフリをしながらいつも右から左で、必ず途中で力尽きて寝てしまう彼を見ながら、私も眠りました。
私は過食して体重が1キロ太ると「3キロ太った!」、3キロ太ると「5キロ太った!」5キロ太ると「10キロ太った!」と騒ぎました。 でも彼は、私がいくら食べようが食べまいが、太ろうが痩せようがノーコメント。そこにまるで関心がないという感じでした。 いつも普通でした。普通過ぎて、平凡過ぎて「もう少し心配してよ!」「もう少し悩んでよ!」と思うことも多々ありましたが、いつも安定した感情でいてくれる彼のお陰で「あ、今の私、ちょっとおかしい」と自分で自分の状態の変化に気づき、それを客観的に考えられる余裕が出てきました。
ある日、彼の家の本棚に「摂食障害」の本が2冊置いてあることに気づきました。 「これ、わざわざ買ってきたの?」 「え?あぁ。でもさ、なんか難しくてさ、途中でやめた(笑)。こんなの読んでいたらあやを病人扱いしちゃうよ。俺はあやとつき合っているわけで、病人とつき合っているつもりはないから」
嬉しかった。私を普通に扱ってくれる彼の優しさと、彼のこの言葉を素直に嬉しいと思える自分が嬉しかった。 異常としか思えない自分の行為にどうしても病名が欲しかった時期。親を恨み、何がなんでもこの病のことを、この病の辛さを分かって欲しかった時期。普通に扱ってほしいと思いながらも実は特別扱いを求めていた時期。 ・・・いつしかどの時期も卒業している自分に気づいて嬉しかった。
2004/09/04
|
|
|
|
|