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補食
2003/07/14
4日目にして久しぶりに口にした最初の食事は、 3分粥と梅干し1コとすまし汁だった。 「え〜!?こ、これだけ??」ってめちゃくちゃがっかりした。 でもだからこそ時間をかけて1口1口を大切に噛みしめた。 どれもこれも本当に本当に本当に美味しかった。 梅干しが!お粥が!スープがこんなに美味しいものだったとは!! 神様、ありがとう!食べ物ありがとう! あああ〜、生きているってなんて幸せなことなんだろう! ・・・ってな感じだった(笑)。
断食は摂食障害の治療にはあまり効果がないように思う。 むしろその後にくる反動の過食で更に体を痛めてしまう 恐れがある。でも断食の後の補食の旨さと 食べ物に対する感謝の気持ちは言葉では言い表せない ほどのものがある。一緒に断食をしていた他の人たちも みな、それに感動していた。
たったそれだけの食事を私は全部食べることができなかった。 あれだけ苦しみながら食べるのを我慢して痩せたんだ。 食べれば戻る。当然じゃないか!
「もうお腹一杯!」わざとそう言いつつ、毎食、必ず半分残した。 となりに座っていたきみちゃんもそうしていた。 私はそれがむかついてしょうがなかった。 「なんで食べないのよ?」「あんたこそ」「真似しないでよ」 口にはせずとも、互いにそう思っていたように思う。 何でも話せる大切な存在だったけど、同じ病故故に 相手の言動が気になることも多かった。
食べられる幸せと食べ物への感謝の気持ちで心を満たし お腹の不満をごまかした。 だが空腹で夜は全っく眠ることができなかった。 何が辛いってこれが一番辛かった。 テレビも雑誌もとにかく食べ物の情報ばかり食い入るように見た。 「甘いものが、こってりしたものが食べたいよ〜」 日中は断食中と同じように、楽しみながらもよく動いた。 だが食べ物屋の前では必ず足が止まりうろうろしてしまった。
断食中と補食中で違ったのは、食事の時間があったことくらいだった。 ただ食事の時間があるとないとでは、1日の暇さや気分が全然違う。
何もすることがない、したいこともない。 いつ起きてもいつ寝ても良い実家での生活の中で 私は絶えず続く不安と焦りと暇に耐えられず、 食べたくのに・・・と思いながらも 食べ続けるしかなかったのかもしれないなーと思った。
何はともあれ4日間の補食も終え、トータル7キロ減の 体重に満足感を得ながら、一週間のグループ断食終了の日を 迎えた。 さぁ〜て、次は山中湖の民宿へいざ出発だ! まだまだ充分太っていたが、痩せたことで得られた 見せかけの自信が、新たな不安を前にした私に勇気を 与えてくれた。
今ほどリゾート化していない伊豆高原で、私は 「〜しなければならない」という自分で決めた自分だけの法則から 逃れることができた。毎日が笑顔だった。これは断食のお陰だけでは ないと思う。 これに健康的な食生活をプラスできさえすれば、私はきっとこの 場所で摂食障害を克服できるだろう。 そんな漠然とした思いが、けれどずっと頭の隅っこに残っていた。
私は2年後にまたここに戻ってきた。今度はこの保養所で 働く為に。
2003/07/14
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