きみちゃんとの出会い
初めて降りた伊豆高原駅は何にもない田舎の駅だった。
でも空は広く、海は青く、山から流れてくる風は本当に
気持ちが良かった。
今は無きその保養所は駅から徒歩20分ほどのところに建っていた。
私が利用したグループ断食というプランは、3日間の断食と
4日間の補食を経て帰宅するというものだった。
みんなで一斉に行なう為、通常の料金よりもずっとお得だった
ようだ。それでも8万円だ。断食するだけなのに何でよ?って思った。
行ってすぐに、所長から断食についての説明があった。
そして断食をする理由を聞かれた。「痩せたくて・・・」
所長に「断食には内臓を休ませ、自然治癒力を高める効果が
あります。でも大切なのは断食よりも補食の方です。
少しずつ少しずつおかゆからごはんへと戻してゆきます。
これをちゃんとしないで帰ると、断食で休んでいた内臓が
びっくりしてしまい、来たときよりも状態が悪化してしまう
恐れがあります。だから補食をきちんと食べてから帰ることを
約束してください」と言われた。
夜には普通に夕飯が出された。行ったらすぐに断食に入ると
思っていたのでこれには戸惑った。美味しそうだったが半分残した。
食べながら周りを見回した。一緒に断食をする人たちは
おばさんとおじさんばかり。若い子は一人もいなかった。
この人たちと一週間一緒に上手くやっていけるのかなぁ。
あー、なんかめちゃくちゃ不安。
帰りたくなってきちゃったよ~(>0<)
一人寂しくお風呂へ行ったら私と同い年くらいの子が先に湯船に
入っていた。きゃ~♪♪
「こんにちは」「こんにちは」「どこから来たんですか」「東京」
「え~!私も~」「いくつ?」「18」「え~!私も~」
緊張の糸が一気に解けた。私達はいろんな話をした。
そのうち何故断食に来たかという話になった。
互いに互いの目を気にしながら話し始めたその理由は
全く同じことだった。
彼女も過食症に悩んでいたのだ。本当に驚いた。
だってそんは風には見えないよ!すごく明るそうだし、
すごく優しそうだし・・・思ったままを伝えたら彼女も
全く同じ言葉を私に返してくれた。
「でも私は太っているもん」と即座に言い返したけど
彼女も太っていたので思わず笑ってしまった。
そこはお風呂。互いに裸だったし、最初からもう全部
見せちゃいました!って感じだった。
これが私ときみちゃんとの最初の出会い。のちに私達は
互いに励まし合い、摂食障害を克服した。
そんな彼女も今は一児の母。
私が迷った時にいつも冷静な意見をくれる大切な存在だ。